やりがいを感じる瞬間

糖尿病や腎不全の初期はほとんど自覚症状がないため、食事制限しろだの薬をちゃんと飲めだの言われても「でもどこも具合悪くないし・・・」と今一やる気が起きないのは当然だと思います。検査結果渡されて「腎臓の機能が悪くてクレアチニンが上がってて、カリウムも高めです」って言われても、「はぁ、そうすか・・・で?」で終わるのがオチだと思います。まずは腎臓とは何か。そしてBUN、Cre、Kとは何か。なぜ蛋白制限・カリウム制限・食塩制限をしなければいけないのか(なぜそれらが高値なのがいけないのか)。なぜ血糖値を低めに抑えなければいけないのか。それらができなければ先々どうなってしまう可能性があるのか・・・

食事のことは栄養士さん、薬のことは薬剤師さん、腎臓の機能の説明は看護師さん、と役割分担は決まっているけど、やはり「治療方針を決めてる医者」(実際決めてるのは指導医だけども)がそれに付け加える形で説明すると患者さんはすごく納得してくれます。「こんなに懇切丁寧に教えていただいたのは初めてです。少し霧の向こうが見えてきました。本当にありがとうございます」と言われたときはちょっと照れくさかったけど「あーやっててよかったー」と思いました。確かに説明するのは医者じゃなくてもできるけど、コンプライアンスが変わったりするのなら、やはり治療の一環として重要なことだと思うのです。インフォームドコンセントなんてもう言い古されてる気もしないでもないですが、検査結果渡して「この数値とこの数値が高いですね。この薬で下げましょう」だけじゃピンとこないでしょう。

「ちゃんと説明するのは当たり前だろ。何をいまさら」と思ったそこのアナタ!未だに「外来では3時間待ちの3分診療だった」とか言われる中、時間をかけて説明するのはかなり難しいのです。待ち時間を短くしようとすれば説明時間も短くなるし、じっくり説明してると待ち時間が長くなるし・・・じゃあそんなに外来に予約患者入れるなよ、と思うかもしれませんが、別に無駄な予約が入ってるわけではないのでそれはかなり難しいと思います。

ゆとり教育」は色々うまくいってないようですが、「ゆとり医療」はいいと思うんですよね・・・いつも余裕を持ちながらじっくり医療を行う、という。納得いくまで話し合って、そして共に病気と向き合う。あぁいいなぁそんな医療・・・(うっとり