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患者さんがCR*1に入らなかった。




マルクがうまくできて浮かれてて、「うまく染まってますかねぇ〜??」なんて言いながら軽い気持ちで顕微鏡をのぞいた瞬間、頭が真っ白になった。

いや、確かに色々とリスクの高い人だったし、冷静に考えれば・・・っていうか冷静に考えなくても寛解に入ってないことくらい簡っ単に予想はできた。できたけど、最近は調子よかったし、データも悪くなかったし、大変だった時期を乗り越えたし、あれだけ頑張ったし、すごくいい人だし、本当に助かって欲しいし・・・といった極めて非科学的な思いがあったのも確かだ。自分でもちゃんとこの人のハイリスク因子は挙げられる。でも「この人は近いうちに死ぬ」と思いたくなくて、認めたくなくて、そういった現実を吹っ飛ばして私の中では知らず知らずのうちにもう治ったということになってたらしい。キサマは本当に医者なのかと・・・


顕微鏡をのぞきながら涙をこらえるのに必死だった。痛いとか苦しいとか辛いとか文句ひとつ言わずに頑張ってきたのに、重篤な副作用とか誰もが諦めかけた感染症とかを闘い抜いたのに、あの尋常じゃない苦痛と努力は無駄だったわけ?悲しさの次には怒りがわいてきた。regimenを考えたのは自分じゃないけど、悔しさもわいてきた。もっとこうしてれば、とか、もっとああしてれば、とか、浅い知識で色々思った。


落ち着いてから、自分でblastの数を数えた。その多さにまた悲しくなった。一緒にスメアを見た先生に報告したら、そっと今後の治療方針を言われた。確かにベストな方法なんだろうけど、でもそれを聞いてまた悲しくなった。





時々無性に患者さんがみんな元気になればいいのにと思う。病気がなくなればいいのにと思う。そしたら医者は職を失うとか言われるけど、そんなの本望だ。

*1:Complete Remisshon:完全寛解のこと