時には少年のように


もうだいぶ前ですが、消化器外科のY教授執刀の肝切除の麻酔を行った時のことです。


肝臓は血の塊みたいなものなので、切除範囲にもよりますが、それなりに出血します。なので、それなりの準備をします。


が、そのときは手術中盤から予想をはるかに上回るスピードで出血し、あっという間に血圧が60台に。ひえぇ勘弁してくれぇと思いながら全開で輸血するも追いつかず、ポンピングしながら術野を見ても当然まだ終わる様子はなく、教授はせっせと肝臓を切っている。


とかなんとか言ってる間に血圧は50台に。やめてえぇぇ〜。それでも教授は「吸引しっかりねー」とか言いながらまだざくざく肝臓を切っている。どうやらけたたましく鳴っているアラーム音は聞こえないらしい。


そ、そろそろ本気でやばい!これはもう無理だ!というわけで勇気を出して教授にお願い。


私「あ、あの、Y先生、今ちょっと血圧が50台でして、輸血してるんですけど追いつかなくて、大変申し訳ないのですがもし可能であれば一旦止血を・・・」


するとY教授、はっとした顔を私に向けて、


Y教授「ああぁ、ごめん、ごめんね。ちょっと夢中になっちゃって・・・一旦手を止めますね。止血します。」




ち ょ っ と 夢 中 に な っ ち ゃ っ て




御年6×歳の教授を夢中にさせてしまうもの・・・それは肝切除・・・
その後圧迫止血していただいている間にしっかり輸血をし、手術は無事終了しました。
そして手術が終わってから教授が一言。


Y教授「いやー先生、さっきはごめんね。僕、走るか止まるかしかできなくて・・・」




走 る か 止 ま る か し か で き な く て




教授が青春真っ只中を駆け抜けているような感じがしました。
繰り返しますが、Y教授は御年6×歳です。