物品が散乱し血の海だった周囲を最低限片付けて娘さんをお部屋に入れたら、小さい声で「お父さん、死んじゃったの・・・?」と言われ、それまで気にしていた血圧だとか脈拍だとか意識レベルだとかそういうものが全部つながって1人の「人」になり、頭が一瞬真っ白になったことがありました。


比較的軽症だった「お母さん」は私の担当になりました。ご家族の希望もあり、「主人は大丈夫かしら?主人が横にいたんだけども・・・」と気にしながら度々尋ねてくるその人に、私は一晩ずっと「色々検査してますからね」とか「まずはご自分の心配をしなきゃ」とかごまかし続けました。


結局私の口からは真実を聞かされずにその人は退院していきました。もう今更だけど、真実を知ったとき、あの人はどう思っただろう・・・と気になったりします。