「頭悪い」「心の病気」「二度と来るな」個人HPで患者中傷 女性医師 病院側、処分を検討

耳鼻咽喉科担当の女性医師が、個人ホームページの「日記」に診療内容や手術の様子を公開し、「頭悪い」「二度と来るな」などと患者を中傷する書き込みを繰り返していたことが十三日分かった。指摘を受けた医師は日記を削除したが、病院側は医師の処分も含めて対応を検討している。

かなり数の医療系BlogやHPで取り上げられているこの「事件」、なかなか自分の中で咀嚼しきれずにずっとここに取り上げられずにいました。そして模試だのQB(問題集)だのやることが大量にある今、それらのサイトや日記を全部読めずにいます。言及しているサイトのリストはザウエル先生のところ(id:zaw:20050115#p1)やちりんさんのところ(id:chirin2:20050115#p2)をご参照ください。


この事件がここまで波紋を広げて様々な形で議論されている理由のひとつとして、「医療者の生態」がまだまだnon医療者に知られていない、理解されていないということがあると思います。

たとえば上記の記事の中の

「ただ今当直中です」と勤務中の書き込みであることを明らかにしている表現も複数ある。

という一文。私は「え、だから何?何がまずいの??」と思っていたのですが、non医療者からしたら「当直中=勤務中=仕事以外のことするなんてけしからん!!」と思ってしまうのは分からないでもないです。

しかしこれはid:zaw:20050115#p1を読んでいただければこの一文がいかにナンセンスなものであるか分かると思います。

例えば、当直というのは待機勤務、呼ばれなければ寝ていてもいい時間であって、その時間中にネットを閲覧したり、「当直中です」という書き込みをするというのは構わないと思います。

そうそう、そうなんですよ。よくテレビの医療系特番なんかでも、当直中寝ててポケベルとかPHSでたたき起こされてすっ飛んでいく研修医の姿が取り上げられていますが、それを見て「勤務中に寝るなんてけしからん!!何を考えているんだ!!」と思った人はほとんどいないのではないでしょうか。それからすれば「当直中=常に起きていて仕事をしていなければいけない」とはならない、つまりネットを見たり「当直中です」という書き込みをしたりするのは別にいけないことではないはず・・・というのは多分理解していただけると思います。それともそんなことすら医療者には認めてもらえないんでしょうか・・・?

他に「飲酒手術」に関しても、まさに医療者側の現実とnon医療者側の理想による溝が感じられます。

そして次の一文にはぜひnon医療者側にも気付いてほしいのです。

今の勤務態勢のまま、ただ医者の責任だけを追及し続け、罰則で脅し、医者の良心だけで医療をまわそうと思っても、必ず崩壊します。

non医療者側が医療者に良心を求めるのは分かります。私も良心のない医者なんていやです。が、それに期待をするあまり過剰な自己犠牲を強いたり聖者のような姿を求めたりすることは、何の解決にもならないどころか、むしろ良医の育成を阻むものになってしまうと思うのです。それはこの記事に言及している日記やblogを読んでいただければ多くのドクターが「そんなこと言われても・・・だったらもう(以下略」というようなことを言っているのでぜひぜひ読み、そして考え、そして分かって欲しいのです。


しかしこれは私が「医療者側」を見れる人間だから言える&理解できることであり、「non医療者側」の人間に完全に理解しろ、といっても難しいことだと思います。


もし私が医学部に入っていなかったとしたら確実に「non医療者側」にいて、「なんだこの女医?!こんなヤツとっとと医師免許剥奪しろよ!!ムカつく!!『やっぱり』医者なんてこんなんばっかなんだ!!」と思ったことと思います。そして「別に聖者じゃなくても、名医じゃなくてもいいのに。ただやさしく私が話すことに耳を傾けてくれて、病気が苦しいんだということを分かってくれれば・・・。なのになんでこんな簡単なことが医者にはできないんだろう。どうして『みんな』怖くていじわるなんだろう」、と。


なかなか理解し辛い医者の生態。だからこそ「医療者側」もしっかり見れる私が日記を書いて医者とか医学生がどんな生活をしているのか、生の姿をガンガン晒そう!!んで「溝」をなくそう!!・・・などと息巻いていたのですが、この事件をきっかけにあんまり詳しく書くのも控えなきゃいけないな・・・と複雑な気持ちになりましたorz



つーかほんと医療者とnon医療者って政治家とnon政治家くらい仲悪いですよね・・・なんとかしないとこのままじゃどっちも不幸になるばかりですよ。