解剖学実習 後編

解剖台の下に見えたものが虫かと思い、


私「ちょ、ちょ、ちょっと、そこになんかいるんだけど何?!
男子「ん、これ?あぁ皮膚の一部みたいだよ」
私「なんだー皮膚かー虫かと思ってびっくりしたよー
男子「・・・池田さん、それ反応逆だから、逆


とか突っ込まれるようになってきたら解剖学実習に慣れてきた証拠です。

ちなみによく解剖実習中は焼肉とか刺身とか豆腐とかいり卵とかが食べられなくなるとか言いますが(何が何にあたるのかはご想像にお任せします)、私は全くそういったことはなく無事過ごすことができました。いやむしろ肉が食べれなくなったとかいう人は一人もいなかったような・・・だって普通同一視しないし・・・とかって切り離して考えられることがすでに変なんだろうかorz


そんなこんなで数ヶ月間にわたる解剖学実習が終わると、ご遺体をご遺族に返還する式が行なわれます。有志で募られるお手伝いの一人として、私も参加することとなりました。

実習中、解剖させていただいているのは「本物のご遺体」で、以前は生きてらした方で・・・といったことを忘れたことはありませんでしたが、やはり「本物のご遺族の方々」を前にするとなんだか変な気持ちになります。忘れられないのは式に参列していた私と同い年くらいの女の人が、式の最初から最後までずっと泣いていたこと。若い人は彼女だけで、泣いていたのも彼女だけでした。母親らしき人と一緒にいたその人は、一体誰を亡くしたんだろう・・・ずっとご遺体を借りたままでごめんなさい、解剖なんかしてごめんなさい・・・悪いことはしてないはずなのに、なぜか謝りたい気持ちになったのを憶えています。

私が死んだら医学生の勉強のために献体します、というかたがたの集まりにもお手伝いとして参加したことがあります。白菊会と呼ばれるその会の総会でお会いした、とあるご婦人のことも忘れられません。「ここの病院の先生方にはすごくお世話になったのよ。だからせめてものお礼として私が死んだらぜひ私の体を使って勉強して欲しいの」と微笑みながら話されたご婦人。思わず「いやいやそんな、縁起でもない・・・」と言ってしまいそうになりました。

教科書に書いてあることはなかなか覚えられず、しかも覚えた端から忘れていってしまいますが、こういった出会いはなかなか忘れません。

どれもこれも一期一会。これからも全部一期一会。