解剖学実習 前編

多くの医学部では、2年生の時に医学部のハイライトともいえる「解剖学実習」が行われます。

うちの大学でも連日午後に行われていたのですが、あのホルマリンの独特のにおいとじめっとした雰囲気の解剖室はなんともいえないものがあります。

医学生とはいえやっと教養を終えた程度の人間が「人の死体」にお目にかかったことなどそうあるものではなく、解剖学実習の初日は「一体どんな感じなんだろう・・・」とものすごくドキドキしていたことを覚えています。けど黙祷をしてから実際にビニール袋に包まれて出てきたご遺体を見た時、不思議と「気持ち悪い」とか「怖い」といった気持ちは出てきませんでした。「生きていない人」「前は生きていた人」といった印象で、実際に触れたり(といっても手袋越しですが)することにも抵抗は感じませんでした。変なのかな・・・でも多分多くの人がそんな感じだったんじゃないかな、と勝手に思ってたりします。

実習自体はかなりハードで毎日ノルマがあったため(今日は頚部の神経や血管の走行を見る、明日は手の関節や筋肉を見る、といった具合に)、それらをこなすのは一苦労でした。うちはそうでもなかったのですが、他大学に通う友人の場合は毎日22時近くまでかかるためウィークリーマンションを借りる人もいる、なんて話も聞きました。

実習は5〜6人の班ごとに行われます。みんなして実習書を片手に頑張って解剖していくのですが、なにぶん何がどこにあるかなんて肝臓とか心臓くらいしか分かっていないため作業は困難を極めます。


私「せんせ〜!胃ぶくろが見つかりません!!
先生「医学生が『胃ぶくろ』言うな!!

(注:後から胃を摘出されていた方だったと判明)


まぁ私はこの後「脳みそ」という単語も使い、またしても「医学生が『脳みそ』言うな!」とか怒られたわけですが・・・

そしてうちの班ではあまり被害は出ませんでしたが、大雑把な性格な人がいると神経やら血管やらを切ってしまう人がいたりもします。近くにあるものを複数本まとめて切ってしまうとどれがどれにつながるのか分からなくなってしまい、修復不能になってしまったりもします。いやはやなかなか難しいです。